
遺産相続と遺産分割協議手続きの流れ
遺産相続とは、亡くなられた方がもっていた財産(現金、預金、株式、投資信託、土地、建物、生命保険金等)や、債務(銀行借入金や大家さんの場合預かり敷金等)を、家族の誰かが、そのまま受け継ぐことをいいます。
遺産相続は、ご家族の方が亡くならると同時に始りますが、いざ遺産相続が始まりますと、葬儀の準備や香典返し、関係官署への届出や細々とした手続き等、やらなければならないことが波のように押し寄せてきます。
ただでさえご家族が亡くなくなり、精神的にも大変な時に、これら遺産相続のための手続きを滞りなくおこなうのは非常に大変です。
ここでは、少しでも手続きの負担を軽くするためにも、どのように遺産相続・遺産分割協議の手続きを進めるのかを簡単に説明いたしますので、どうぞご参考ください。
死亡届
ご家族が亡くなられて、最初にしなければならない手続きが死亡届です。
死亡届は、死亡後7日以内という期限がありますが、届出をしないと火葬・埋葬の許可がおりませんので、実際には死亡日または翌日には届出ることになります。
届出は、親族の方が届出人となって、亡くなられた方の本籍地・死亡地または届出人の市区町村役場に対してしますが、葬儀社が市区町村役場に出向いてくれるケースが多いでしょう。
遺言書の確認
宗教にもよって異なりますが、通夜や葬儀、初七日法要が終わりましたら、具体的な遺産相続・遺産分割の手続きを始めます。
まずは、遺品整理をする際に、注意して遺言書があるかどうかを確認します。遺産分割した後に遺言書が見つかったために、遺産分割を初めからやり直すということがないように慎重に確認しましょう。
公正証書遺言以外の遺言書がみつかった場合
公証人が作成した公正証書遺言以外で、本人の直筆で作成した自筆証書遺言などが見つかった場合は、封印がされているか否かを確認し、封印がされているものについては、開封せずに遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で検認の手続きをします。
検認せずに開封しても、遺言は無効にはなりませんが、開封した人に過料という反則金のようなペナルティが与えられるほか、検認済みの遺言書がないと、不動産や金融機関の名義変更手続きができませんので、ご注意ください。
相続人の調査と確定
遺産をどのように分け合うか(遺産分割)は、相続人全員の話し合い(協議)で決める必要があるので、協議の前に、誰が相続人であるかを調査して、確定する必要があります。
相続人の調査・確定は、まず亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍などを役所から取り寄せておこないます。
除籍とは、戸籍に記載されている人が、婚姻や死亡などで戸籍から抜けたことが記載されているものをいい、改製原戸籍とは、戸籍の改製(作りかえ)がされた場合の改製前の戸籍のことをいいます。
また、亡くなられた方の戸籍等を取り寄せると同時並行して、すべての相続人の戸籍を役所から取り寄せます。この際、遺産分割協議がまとまった後の協議書に実印を捺印するため、印鑑証明書も併せて取得しておくといいでしょう。
相続財産に不動産がある場合は、登記名義を変更するために不動産を取得する相続人の住民票の写しも必要になりますので、こちらも併せて取得しておくと後々手間が省けます
ちなみに、誰が相続人になるかは、次をご参考ください。
配偶者(夫や妻)
亡くなった方に配偶者がいる場合は、配偶者は常に相続人となります。ただし、相続開始時に既に離婚している場合や、亡くなっている場合は相続人にはなりませんので、ご注意ください。
直系卑属(子や孫)
亡くなった方に、子がいる場合は子は相続人となります。相続開始時にすでに子が死亡していて、孫がいる場合は孫が相続人となります(代襲相続)。孫が死亡していて曾孫がいる場合も同様に相続人となります。養子も、血縁がある子と変わりなく相続人となります。
直系尊属(親や祖父母)
直系卑属がなく、親がいる場合は、親は相続人となります。相続開始時に親が既に亡くなり、祖父母がいる場合は、祖父母は相続人となります。養親も、血縁のある親と変わらず相続人となります。
兄弟姉妹
直系卑属も直系尊属もなく、兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹は相続人となります。相続開始時に兄弟姉妹が既に亡くなり、甥・姪がいる場合は、甥・姪が相続人となります。
戸籍等を取り寄せなくても、相続人は確定していると思われる場合もあるかもしれませんが、戸籍等を取り寄せたことで、認知していた子や、以前の配偶者との間の子がいることが判明するケースも珍しくありません。
また、不動産の登記名義の変更や、金融機関などの手続き等でこれらの戸籍等は必要となるので、調査・確定を怠らず、役所から取り寄せましょう
遺産の調査と確定
相続人の調査と同時並行して、受け継ぐ遺産を確定するために、亡くなった方の財産(預金・不動産など)や債務(借金など)を調査を進めます。
遺産相続では、プラスの財産に限らず、借金などのマイナスの財産も相続人に受け継がれるので注意が必要です。
財産はプラスのもとマイナスのものをあわせて一覧表(財産目録)を作成しておくといいでしょう。また、年間所得が2000万円を超えている人であれば、毎年の確定申告時に作成している財産及び債務の明細書が参考になります。
また、財産目録の作成と並行して、各遺産の価額も調査し、相続放棄や遺産分割協議(相続人間の話し合い)に備えます。
5.相続放棄・限定承認
遺産の調査の結果、プラスの財産よりマイナスの債務のほうが多い(債務超過の)場合には、相続放棄を検討し、債務超過か不明の場合は限定承認を検討します。
相続放棄
相続放棄をすると、はじめから相続人でなかった扱いになります。
したがって、プラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐことはありません。また、相続放棄により代襲相続もおこりません。
限定承認
限定承認は、プラスの相続財産の範囲内のみで、マイナスの財産(債務)を弁済することを条件に、相続できる制度をいいます。
プラスの財産より、マイナスの財産が多くても損をすることがなく、プラスの財産のほうが多ければ、残った財産を相続できる非常に便利な制度です。
限定承認は、非常に便利な制度ですが、相続人全員が共同しておこなわなければならず、手続きも複雑であまり利用されていないのが現状です。
相続放棄も限定承認も、亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要がありますが、自分が相続人となったこと(かつ相続財産があること)を知ってから3ヶ月以内という期限があります。
相続放棄・限定承認は早急かつ慎重に検討しましょう。
所得税の準確定申告
亡くなられた方の死亡した年度の所得税については、相続人全員で税務署に申告する必要があります。
通常の確定申告は、暦年1年分を翌年の3月15日までに行いますが、死亡した年については、1月1日から死亡日までの分を相続開始後4ヶ月日以内に亡くなられた方の納税地(通常は住所地)の税務署に申告する必要があります。これを準確定申告といいます。
なお、1月1日から3月15日までに前年度の確定申告をしないまま死亡した場合は、前年度分は準確定申告とあわせて申告すれば足ります。
遺産分割協議
相続人全員で、遺産をどのように分け合うかを話し合います。話し合いがまとまりましたら、財産などの名義変更や、後で争いが生じないようにするために遺産分割協議書を作成します。
相続登記・名義変更
遺産分割協議がまとまれば、協議内容にしたがって、財産の名義の変更を行います。
不動産があれば、法務局への不動産の相続登記の申請。
預金があれば、金融機関へ名義変更または解約の手続き。
自動車があれば、陸運支局または検査登録事務所へのの移転登録申請。
などなどを行います。
